翌朝、いつもより早く目覚めたアマリリスは、長年の習慣から自分で身支度を整えた。さすがに王城で用意されたベッドだけあって寝心地は抜群だった。

 昨日、アマリリスはクレバリー侯爵家から西の馬車乗り場まで、かなりの距離を歩いたのにすっかり疲れが取れている。

 伯父が来て以来、ゆっくりと湯船に入れなかったが、メイドが用意してくれたので思いっ切り足を伸ばしてくつろいだ。

 そんな幸せな時間を過ごしてぐっすりと眠れたので、今日は調子もいい。髪をまとめようとしたところで、昨日から世話をしてもらうことになったメイド、ジーナがやってきた。

 アマリリスが準備を済ませていたのを見て、血相を変えて駆け寄ってくる。

「アマリリス様っ! 私が! 私がお手伝いをさせていただきますので、どうか……!」
「あ……ごめんなさい。ジーナの仕事を奪ってしまったわね。それなら髪をお願いできる?」
「もちろんです! ですが、あの、もうひとつルシアン殿下より仰せつかっていることがありまして……」
「そうなの?」

 ジーナがクローゼットを開けると、そこには色とりどりのドレスがかけられていた。カラーは淡いパープルやレモンイエローなどが多く、王族の妃たちが好んで着る色ばかりだ。

「あの、こちらのドレスをアマリリス様に着ていただくようにとのことです」
「そ、そう……」