「……かしこまりました」
「それでは、明日になるが書類を用意するからサインを頼む。教育のスケジュールはルシアンの様子を見て決めてほしい」
「承知いたしました」

 国王はそう言うと席を立ち、部屋を後にした。わずか十分程度の謁見だったが、この後も政務が詰まっているため足早に去っていく。

「では僕が部屋まで案内します。その他にも教育係になっていただくにあたってお話がありますので」
「よろしくお願いいたします」

 ルシアンが宿舎まで来るのは気が引けたけれど、他にも話があると言われたら断れない。アマリリスは仕方なく案内をお願いすることにした。

 ふたり並んで通路を歩き、アマリリスのボストンバッグはルシアンが持っている。
 完璧なレディファーストに感心しつつ、ルシアンの高貴さと貧相なボストンバッグのギャップが申し訳なくなって、アマリリスはつい目を逸らしてしまった。