「これは王命である」

 そのひと言で、アマリリスはノーと言えなくなってしまった。

 侯爵家と縁が切れたと思ったら、今度はよりによって王族に捕まってしまうなど、なぜこんな展開になっているのか意味がわからない。

 アマリリスが絶句していると納得したと受け止めたのか、ルシアンがニコニコと朗らかな笑顔で口を開いた。

「それで教育を受けるにあたって、どうしても行動をともにする時間が増えると思うんだ。そこでいちいち呼び出していては時間の無駄になるだろうから、こちらで部屋を用意させてもらったよ」

 おそらく王城勤務者が暮らす宿舎に、部屋を用意してくれたのだとアマリリスは察した。住むところを探す手間が省けてありがたいが、国内にいると大きな問題が発生してしまう。

「ありがたい申し出ですが、伯父に断りなく出てきておりますので、一度帰らせていただきたいのですが」
「それはこちらで対処しよう。これは王命だとクレバリー侯爵にも伝えれば問題あるまい」

 王国最強のトップダウンなら、伯父とて反論できない。王太子の教育係ならエミリオも手を出すのは難しいだろう。アマリリスはようやく、この状況を受け入れる覚悟を決めた。