ルシアンの執務室で三人の男たちが集まり、ある重要事項について相談していた。

「なあ、結婚式が一年後って早くない?」
「何言ってるの、ユアン。それでも遅いくらいだよ」
「それより、ユアンはいつになったらリリスに会うつもりだ?」

 集まっているのは部屋の主人であるルシアンと、アマリリスの兄であるテオドールとユアンだ。アマリリスは妃教育を受けているため、この時間は不在である。

 三人はソファーに腰かけ、お茶を飲みながら話を進めた。

「あー、それなあ。結婚式当日じゃダメかな?」
「いや、いくらなんでもその前に会っておけよ。リリスは会いたがってるぞ」
「うーん、ちょっと今の組織から抜けるのに時間がかかるんだよな。半端な状態で会って、リリスが危なくなるのは避けたいし」

 ユアンもテオドールと同様で、南の国ナイトレイの養子先に話が通っておらず、そのまま町に住み着く孤児になった。ひょんなことからイルシオ商団に拾われたが、少しばかり黒い組織であったためテオドールのように話が簡単ではないのだ。