「それだけ僕を好きってことだよね?」
「……知りません!」
「ふうん、そっか。ふふ、そんなに僕が好きなんだ」
「…………」

 ルシアンの花が咲くような極上の笑顔に、アマリリスの心臓が暴走しているのを悟られたくなくて背中を向ける。
 そのまま背中から抱きしめられて、アマリリスは抗議したくて斜め後ろのルシアンを見上げた。

 その瞬間、熱く柔らかなルシアンの唇が降ってきて、心臓だけでなく身体中が燃えるように熱くなる。
 ルシアンの深い愛を受け止めて、それしか考えられない。

 やっと解放された頃には、クラクラとする頭でルシアンをうっとりと見上げていた。

「リリス、すぐに結婚しよう。もう絶対に誰にも渡したくない」
「……は、い」

 妖艶に微笑むルシアンを見てアマリリスは思った。

(やっぱり腹黒教育なんてもう必要ないわ——)



 その後、テオドールはすぐに正式な手続きを取り、クレバリー侯爵家の当主となった。モンタス辺境伯はテオドールが正当な後継者だと認められたことを喜んでくれて、年に一度顔を出すことを条件に退団に応じてくれた。

 すでに王城で働いている使用人たちには、屋敷に戻るか確認して希望に応じて職場を用意している。
 アマリリスはクレバリー侯爵家が没落する前に取り戻せたことで、ケヴィンたちにも義理を果たせたと安堵した。