確かに来月はアマリリスの二十一回目の誕生日だ。毎年、こっそりと厨房でお祝いしてくれていた。じわりと琥珀色の瞳が潤んで、アマリリスの視界がぼやける。鼻の奥がツンとしたけど、何度か瞬きしてやり過ごした。

「ありがとう。こんなによくしてくれて……この恩は絶対に忘れないわ」
「では必ず幸せになると約束してください。どうかご無事で」

 こらえきれなくて涙が頬を伝う。ゴシゴシと手のひらで拭って、最後はケヴィンに笑顔を向けた。

 そして、両親や兄たちが大切にしていたクレバリー侯爵領を守れなかったことを心の中で懺悔しながら、屋敷を後にした。