嘘にまみれたアマリリスの悪口を聞くのは、ルシアンにとって業腹だった。しかし、確実にロベリアを排除するためにはここで耐えなければならない。この先の行動を促すためにも努めて優しく振る舞う。

『本当はこんな格好でルシアン殿下の前に来るのも、とても恥ずかしかったのですが……お義姉様が許してくれなくて……』

 そこまでアマリリスのせいにするのかと、ルシアンは感心した。ロベリアはとことんアマリリスのせいにして、男の庇護欲を誘う作戦のようだ。

(まあ、普通の男だったら効果があったかもしれないけどね……)

 あいにくルシアンはアマリリスにしか興味がない。そしてアマリリスを害する存在は徹底的に排除するつもりでいる。そのために非道な手段を使うことに抵抗はなかった。

『ルシアン殿下。明日の婚約者のお披露目をお考え直しください。どうかお願いします。そのためならわたしは……どんなことでもいたします』
『どんなことでも……?』
『わたしがお義姉様の代わりに、心も身体もルシアン殿下に捧げます。どうかそれでお許しください』

 そう言ってロベリアはルシアンの身体に手を伸ばし、着崩れたシャツの間に手を入れてきた。