「まあ! ルシアン殿下は本当にお優しいのですね……! わたし、今回の婚約解消でとても傷ついてるので、ルシアン殿下に慰めていただいたら元気が出そうです」
「そう……それは大変だったね。ロベリアほど可憐なご令嬢なら、周りの男性が放っておかないだろう? 僕の出番なんてないんじゃないかな?」
「そんなことありませんわ! わたしはルシアン殿下がいいのです……あっ、す、すみません、つい本心が……」

 ロベリアはじわじわとルシアンに近づき、着実に距離を縮めているように見えた。アマリリスはその様子を一歩引いたところで眺めている。

 チラチラとロベリアがアマリリスを盗み見るが、焦ったり、悔しがったり、悲しそうな様子が見られなくて理解できないというような表情を浮かべていた。

 アマリリスはルシアンの表情を読み取り、本心がどこにあるのか理解できるのでいつも心は凪いでいる。それを知らないロベリアの方が悔しそうに顔を歪めた。

 ルシアンがアマリリスを見つめる時、たとえ言葉を交わさなくても伝わる熱があった。
 ほんの数秒視線が絡み微笑みを向けられただけで、アマリリスの頬は一瞬で火照ってしまう。

 そんな日々をしばらく過ごしていた。