「ロベリアにはアマリリスの話し相手になってほしい」
「はい、かしこまりました! お姉様に楽しんでもらえるように励みますわ!」

 こういった場合の話し相手は、王太子の婚約者が心を健やかに保つために尽力するものなので、ロベリアの返答を聞いても任せたいと思えない。それなのにルシアンはニコニコと機嫌よさそうに笑っている。

(あ、違うわ。あれは機嫌がいいわけではなくて、侮蔑の感情を隠しているだけだわ)

 ロベリアの言葉で一瞬だけ半眼になり、口元が(いびつ)に引きつっていた。さすがのルシアンもロベリアの言動には呆れたようだ。

「ではロベリア、僕のリリスを頼んだよ」
「お任せください!」

 それからロベリアは侍女として、どこへ行くにもアマリリスの後について歩いた。

 必然的にルシアンとの接点も増え、親しげに話すようになった。ロベリアがいるので腹黒教育はしばらく進んでいない。もともと必要ないほどルシアンは策略に長けているので、なんの問題もない。