北のミクリーク公爵家は国中の鉱山、西のアンデルス公爵家は世界規模の商会、南のカーヴェル公爵家は農産物、東のバックマン公爵家は国中の流通の全権限がそれぞれ与えられている。

 どれかひとつが欠けても民はもちろん自分たちの生活がままならなくなるので、四大公爵家は互いに協力関係にあった。

 しかし、この五年間は稀に見る天候不順で農産物の収穫が思うようにいかず、カーヴェル公爵家の運営がかなり厳しいと聞いている。悪天候にも強い品種の改良も進めているが、予算が取れないことでうまくいっていない。

「そうだ。王家にも援助の打診をもらったが、カーヴェル家の現状を調べたところ私財は国家予算の三年分相当あり断ったのだ。ギリギリまで粘れとは言わんが、こちらとて民のための予算を金のある奴らに割くわけにはいかん」
「当然の判断ですわね」
「だが、カーヴェル家はそれを理解せずに、野心を抱いた」
「まさか、謀反を……?」
「なかなか尻尾を掴めなかったが、今回の事件はカーヴェル公爵の手駒が起こした事件だ。そこでアマリリスに頼がある」

 アマリリスはゴクリと唾を飲み込んだ。