ルシアンは駆けつけた医師の診察を受けて、すぐに適切な治療が開始された。
 医師の見立てでは毒物を摂取したとのことで、国王の指揮のもと王太子暗殺未遂事件として調査が進められる。

 アマリリスはずっとルシアンのそばに寄り添い、早く目が覚めるように祈った。ルシアンは医師の診察と治療を受けているが、いまだ目覚める気配がない。

 それから三日後、アマリリスは国王から話があると内密に呼び出しを受け、執務室へやってきた。そこでアマリリスは疑問に思っていたことを国王に問いかける。

「陛下。あの毒はルシアン様を狙ったものではなく、犯人の狙いは私です」
「ふむ、それはこちらも掴んでおる。証言から最初に毒入りのシャンパンを受け取ったのは、其方であると」
「では、なぜ王太子暗殺未遂にまで事件を大きくしたのですか?」

 国王は眉間の皺を深めて、アマリリスへ鋭い視線を向けた。ここからが国王の本題なのだと、アマリリスも身構える。

「この国の貴族は四大公爵家が大きく取りまとめているのは当然知っているな?」
「はい、北のミクリーク公爵家、西のアンデルス公爵家、南のカーヴェル公爵家、東のバックマン公爵家です」
「うむ。それぞれ公爵家は王家に忠誠を誓い、王家もまた特別な権限を与え、この国を発展させてきた。しかし、それだけでは満足できない者が出てきたのだ」
「………カーヴェル公爵家ですね」