ロベリアはクレバリー侯爵家を自分のものにするため、計画を練っていた。

(——お兄様は女癖が悪かったわ……そうよ、前に言っていた女は、確かブロイル伯爵家の娘を婚約者から無理やり寝とったと自慢していたわよね? なんという名前の令嬢だったかしら……?)

 エミリオの話にまったく興味のなかったロベリアはいつも聞き流していたが、ブロイル伯爵はバックマン公爵夫人の生家だったので覚えていた。だが、そこにエミリオを追い出すヒントが隠れているので、懸命に思い出そうとしていた。

 しかし、どれだけ考えても名前が出てこなくて、メイドがいてもひとり言のようにブツブツと呟いている。

「うう〜ん、ブロイル家の令嬢はアメリーじゃなくて、レスリー? 違うわね……ヒラリーでもないし……」
「もしかして、ナタリー様でしょうか?」
「そう! それだわ!」

 口を挟んできたのは十年近く働いている古株のメイドだった。リネンの交換に来ていたが、思わずと言った様子で口を挟んできた。

「ああ〜、スッキリしたわ。ところで、あんたはどうしてナタリーのことだとわかったの?」
「はい、私の生まれがブロイル伯爵領でしたので、もしかしたらと思ったのです」
「ふーん、そうなの。それじゃあ、今度は証拠を集めないといけないわね……」