アマリリスはひとしきり泣いた後、用意された紅茶を飲んでようやく落ち着きを取り戻した。
 テオドールの胸元を涙と鼻水でべちょべちょにしてしまって、今頃になって羞恥心が込み上げる。

(テオ兄様の上着をあんなに汚してしまった上に、ルシアン様の前でみっともなく泣いてしまったわ……!)

 恥ずかしがるアマリリスを優しく見つめていたテオドールが、おもむろに口を開いた。

「ルシアン殿下、この度は妹との再会をご提案いただき誠にありがとうございます」
「いや、婚約者が喜ぶことをしたかっただけだよ」

 ルシアンの言葉にアマリリスはハッとした。まさかサイコパスであるルシアンがそのような理由で、テオドールとの再会をセッティングしたとは考えていなかった。

 そんな風に心を砕いてくれたルシアンに対して、サイコパスだと偏見を持ちすぎていたとアマリリスは反省する。ただアマリリスを喜ばせるためだという言葉に、胸の奥がポカポカと温かくなった。