アマリリスは祈るような気持ちで一通の手紙を送った。
 それは長兄であるテオドールに宛てで、今のアマリリスの思いの丈を書いたものだ。

 ずっとテオドールに会いたかったこと、兄がこの八年間をどんな風に過ごしてきたのか気になっていること、苦労しているなら寄り添いたいこと。

 それから王太子ルシアンの婚約者になって、テオドールの入国拒否の手続き中で、これからはいつでも会えることをしたためた。

(テオ兄様から返信が来ればいいけれど……)

 大きな不安と少しの期待が入り混じり、なんとも落ち着かない気持ちでアマリリスは手紙の返信を待っている。送ったのは三日程前だから、ようやくテオドールの元に届いた頃だろうと理解はしているが、考えずにはいられない。

 授業を受けていたルシアンは、そんなアマリリスの様子を敏感に感じ取る。

「リリス。なにか気になることでもあるの?」
「ルシアン様、失礼いたしました。少々考え事をしておりました」
「ふうん、どんなこと? 僕だって話くらい聞くよ?」
「いえ、大したことはございません」
「リリス」