ルシアンは幸せそうに微笑んでもっともらしいことを言うが、アマリリスはこの甘さに辟易している。

(いつでもどこでもくっついてくるのは、いい加減にやめてほしいわ……! 社交界にも見事に広まって、面倒しかないのに!)

 アマリリスがルシアンの寵愛を受けていることは、すでに周知の事実となっており国王も王妃も温かく見守っていた。貴族令嬢からは今でも刺々しい視線を向けられたり、こっそり嫌味を言われるがそんなことはたいした問題ではない。

 本当に面倒なのは、ルシアンの懐に入りたいと擦り寄ってくる貴族たちだった。ルシアンやバックマン公爵夫人のいないタイミングを狙って、アマリリスに近づいてくる。

 当然、相手はアマリリスよりも立場が上な気難しい貴族ばかりなので、角が立たないように流すのが神経を使うのだ。

「ルシアン様、休憩は終わりです。今日はこの後、面談があるので、これ以上は私のパフォーマンスが落ちます」
「それはいけないね。では続きはまた後で」

 ルシアンは名残惜しそうにアマリリスの真紅の髪へキスを落とし、ようやくその腕から解放された。