ますます目を吊り上げ、顔を真っ赤にしたクレバリー侯爵はこれが最後だと言わんばかりに喚き散らした。

「ロベリア、これはお前の責任だ! こうなったら後妻でもなんでも早々に嫁ぎ先を見つけるからな!! 私の言うことに従わないのなら今すぐに出ていけ!!」

 ダーレンとの婚約破棄だけならなんてことはない。バックマン公爵家と縁が切れた時点で、その価値は大きく下がっている。しかし、父の指示で動いたのにロベリアが失敗の尻拭いをするのだけは耐えられなかった。

 はらわたが煮えくりかえりそうだったが、追い出されても行く宛はない。ロベリは返事をしないままクレバリー侯爵の執務室を後にした。

(……どうしてこうなるのよ!?)

 私室へ戻ったロベリアは、不貞腐れたように昼間から酒を飲んでいるダーレンを睨みつける。公爵家の嫡男だった頃は自信に満ちあふれ、優雅にロベリアをエスコートしてくれて頼もしかった。

 あの時はバックマン公爵の元で領地経営をしていて、なにも問題はなさそうだったのだ。そこでロベリアは父が斡旋した職が合わなかったのだと思い至る。

(そうだわ! ダーレン様はきっと、官僚の仕事ではなく領地経営に才能があったのよ! だからうまくいかなかったんだわ。クレバリー侯爵家はお兄様が継ぐことになっているけど……このままお父様の言いなりになるなんてまっぴらだわ)