しかもルシアンは国王陛下の前で、堂々とアマリリスを愛称呼びしている。さらにそばにいてほしいと明言され、逃げ道はあるのだろうかとアマリリスは考えた。

「ルシアンの教育もさることながら、なによりも大切な女性であると聞いておる」

 どうやらルシアンが手を回したようで、すでに手遅れのようだ。

「ここまで強く女性を求めるルシアンは初めてでな。其方であれば王太子の正妃としても能力は十分だ。このまま正式な婚約を結んでもらいたい」
「…………」

 アマリリスの心は絶望に染まる。
 まさか今日、国王陛下からルシアンと婚約してほしいと言われるとは考えもしていなかった。拒絶を許さないような目に見えない圧力がかけられて、アマリリスは返事ができない。

(どうしてこうなるの……!? 王太子の婚約者なんて面倒なことしかないのよ! しかもあのサイコパス王太子の妃なんて荷が重すぎるわ!!)