夜会の翌日、アマリリスは国王の執務室へ呼び出された。その理由は明白で、今後もルシアンに教育が必要かどうか国王が判断したということだ。

 執務室へ続く廊下を一歩一歩進んでいく。

(ここで教育が必要ないとジャッジされれば、すぐにでもテオ兄様に会いにいこう)

 東の国へ行くには王都を抜けて街道をひたすら進み、山を超えなければならない。幸い辺境伯の領地はフレデルト王国と南の国にまたがっており、山さえ越えればテオドールがいる辺境伯領となっている。

(移動に乗合馬車を使っても十日から二週間というところね。うーん、嫁ぎ先や就職先の斡旋を断って、成功報酬を金貨にしてほしいとお願いしてみようかしら)

 テオドールと合流できたら次に次兄のユアンを探したいが、そうなると結婚や仕事は逆に足枷となる。ルシアンの教育が必要ないとなれば国王陛下の機嫌が悪いことはないだろう、とアマリリスは交渉することに決めた。

「失礼いたします。国王陛下、お呼びと伺いまいり——」
「リリス、待っていたよ」
「ルシアン様……! どうしてこちらに?」