『電話だ。ちょっと、ごめん』
その日もいつもと同じように昂輝のスマホに電話がかかってきた。
その電話の相手は今日が家庭教師の日だとわかっていて、わざとかけてきているような感じもする。
相手は昂輝の家庭教師の相手が女子高生であると知り、警戒してそんなことをしてきているのかもしれない。
そう思うと腹が立った。
自分と昂輝がふたりきりになれる時間はここしかないのに、それを見事に邪魔されているのだと感じた。
だから、スマホを片手に部屋から出ていった昂輝のすぐ後を追いかけたのだ。
ドアに耳をピッタリくっつけると廊下で話している声がかろうじて聞こえてくる。
その中で昂輝は「泉」と、相手の名前を呼んでいるのが聞こえてきた。
泉。
それは男性にも女性にもつけられる名前だったし、名字である可能性もある。
紛らわしい名前にイライラしながらも、きっと女性の名前で間違いないとあたりをつけた。
『今、バイト中なんだよ』
昂輝がそう説明している声はとても優しくて、由佳が聞いたことのないたぐいのものだった。
その声は大切な女性だけにむけられる特別な声で、由佳の胸の奥がチクリと傷んだ。
その日もいつもと同じように昂輝のスマホに電話がかかってきた。
その電話の相手は今日が家庭教師の日だとわかっていて、わざとかけてきているような感じもする。
相手は昂輝の家庭教師の相手が女子高生であると知り、警戒してそんなことをしてきているのかもしれない。
そう思うと腹が立った。
自分と昂輝がふたりきりになれる時間はここしかないのに、それを見事に邪魔されているのだと感じた。
だから、スマホを片手に部屋から出ていった昂輝のすぐ後を追いかけたのだ。
ドアに耳をピッタリくっつけると廊下で話している声がかろうじて聞こえてくる。
その中で昂輝は「泉」と、相手の名前を呼んでいるのが聞こえてきた。
泉。
それは男性にも女性にもつけられる名前だったし、名字である可能性もある。
紛らわしい名前にイライラしながらも、きっと女性の名前で間違いないとあたりをつけた。
『今、バイト中なんだよ』
昂輝がそう説明している声はとても優しくて、由佳が聞いたことのないたぐいのものだった。
その声は大切な女性だけにむけられる特別な声で、由佳の胸の奥がチクリと傷んだ。



