「お祭りって久しぶりに来たな~!」

会場である神社につくと、君は満面の笑みで言った。

「美味しそうなものもいっぱいある!!」

爛々と目を輝かせてはしゃぐ姿はとても愛らしい。

「ねぇ、りんご飴食べたい! あっ、わたあめも!」

あっちへこっちへと忙しそうに、でも楽しそうに駆け回る君は見ていて飽きない。

「浴衣で、しかも下駄で慣れてないんだから転ばないように気を付けて」

そう言うと、「うんっ」と元気に答える。



かき氷やらたこ焼やらをあらかた食べ終わったとき、君ははっとしたように声をあげた。

「あっ! 花火そろそろだ!」

俺の手を取って駆け出す。

「おすすめの場所があるんだ!」

走りながら、その光景がどれほど綺麗なのか舌ったらずになりながらも教えてくれる。

「ここ!」

着いた場所は、少し神社の林に入った奥まったところで、高台になっているため湖を見下ろせる。


ヒュ~
ドーン!


花火があがった。

昇る花火を見る俺とは対照的に、君は湖へ沈んでいく花火を見ていた。

「………きれい」

ずっとお祭り騒ぎで無邪気に楽しんでいた君は、物静かに微笑んだ。

その顔が目に焼きついて離れない。


俺は誤魔化すように君の視線を追って湖を見る。

いくつものカラフルな火の花が広い湖面を空にしてパッと咲いた。