翌朝目覚めると、豪華なベッドの上には私一人だった。夢の一夜は終わってしまったのだ……。

 一夜の夢だとしても、壱夜さんには感謝しかない。私が新しい未来への一歩を踏み出すきっかけをくれたのだ。

 しかも、私なんかでは一生来ることのない豪華な部屋でのめくるめく時間。置いて行かれたとしても文句はない。

 ベッドの近くにあったバスローブを羽織り寝室の扉を開けて驚く。昨夜は窓の外の夜景に気を取られ、あとは寝室に運ばれてよくは見ていなかったが、だだっ広い豪華なリビングスペースが広がっている。ソファの上には私の着ていたワンピースがクリーニングされて置いてある。そして、テーブルの上にはメモが置いてあった。

『一緒に過ごすつもりだったんだが、急遽仕事が入ってしまった。すまない。部屋は明日まで使えるからゆっくりするといい。落ち着いたら連絡をくれ。壱夜』

 とても綺麗な字で、メッセージの下には電話番号まで書いてある。