私と沙夜、そして壱夜さんの人生が交差し、何かが変わる瞬間(とき)が来たようだ。

 私の中での優先順位は、なにがあっても沙夜が一番なのだ。沙夜が望むのなら、父親の存在を認める時が来たのかもしれない。もちろん、壱夜さんの立場もあるのだから、簡単には決められないのが実情だ。すでに二人は、お互いに親子だと確信しているようなので、もう私にはどうすることもできない段階だとも言えるのだが……。

 興奮冷めやらぬ沙夜は、なかなか眠ってくれなかった。

 ずっと嬉しそうに壱夜さんの話をしている姿に、私の選択肢は間違っていたのかもしれないと切なくなる。

 沙夜のために、そう言い聞かせてはいるが、私自身も数年振りの壱夜さんの姿に心が震えたのは事実だ。あの頃から色褪せない思い出。沙夜の成長と共に色濃くなる面影が、目の前に現れたのだ。

 かなり前なのに一夜の出来事が鮮明に思い出されて、身体が熱くなる。

 一夜の関係と割り切って平気な振りをしていたが、あの日から私の中にはずっと壱夜さんがいたのだ……。