再会溺愛〜夢の一夜の証と共に〜

「あの時は、壱夜さんがどこの誰かもわからなかったから、素直に身を委ねることができたけど、知ってしまったら私では分不相応よ」
「俺がどこの誰かなんて関係ない。相応しいってなんだ?東雲のネームバリューに寄って来るやつなんか信用できない」

 何を言っても壱夜さんには勝てそうにない。でも、沙夜の存在を知られるわけにはいかないのだ。

「私、もう行かなきゃ。店長を待たせているから」
「今日のところは突然だったし仕方がない。でも、俺は諦めるつもりはないからな。覚悟しておいて」

 真っ直ぐに見つめられた揺るがない視線は、私の心の動揺を誘う。あの時から変わらない、魅力的な男性に見つめられて抵抗できる人がいるのだろうか。

 私の中の忘れ去られていた女心を刺激するが、今の私は女である前に母親なのだ。壱夜さんから解放された私は足早にその場を去る。

「店長、すみません。お待たせしました」
「もう良かったの?」
「はい……」
「1つだけ聞いていい?」
「はい」