可愛い娘の姿を見てのんびりしたいところだが、朝の一分一秒は貴重だ。沙夜が食べている横で、すぐに出掛けられるように準備する。

「ママ〜、すっごく美味しい」
「良かったわね。今日はいつもより遠い公園へお散歩に行くって言ってたよね?」
「うん。かばさん公園」
「ママの働くお花屋さんの近くだわ」
「そうなの?なーちゃんに会える?」
「フフッ、会えたらいいわね。でも、絶対に勝手に行動しないこと。先生の言うことを聞くのよ」
「わかってるもん」

 同級生の中でも人一倍しっかりとしている沙夜は、私に子供扱いされるとすぐに口を尖らせる。沙夜がなーちゃんと呼ぶのは店長の奈子さんのことで、赤ちゃんの時からずっとおばあちゃんのような存在の店長が大好きなのだ。

 自転車で保育園に沙夜を送り、店に着くころには一仕事終えた気分だが、時間は待ってはくれない。入荷した花を次々に店に並べていく。

 店がオープンすると、待ってましたとばかりにお客様が来店する。朝は、予約のフラワーアレンジメントを取りに来るお客様とお見舞いなどの花を買いに来るお客様でバタバタするのだ。