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 妊娠が発覚してから、店長をはじめ医院長先生、更にはお二人の娘の奈緒さんにまでお世話になった。一人では不安だろうと妊娠初期と臨月、更には出産後に動けるようになるまで、私の実家に里帰りするのではなく、病院の隣のご自宅に住ませてもらったのだ。

 無事に女の子を出産し、名前を『沙夜(さや)』と名付けた。

 沙夜はまもなく三歳の誕生日を迎える。保育園に預けて、『フラワーショップローズ』で以前と変わらずに働けているのも、店長のお陰だ。

 実家には、約束通り定期的に連絡をしていたが、妊娠をしたことは安定期になったタイミングで伝えた。私が傷心で地元を離れたと察していた両親は、かなり驚いていたが、私の覚悟と店長の説得によって認めてくれたのだ。帰って来ないか?と言われたが、実家へ帰る選択肢は私の中ではなかった。

 その代わり、両親が何度かこちらへ孫に会いに来てくれている。今では店長達と家族ぐるみでの付き合いになるほどなのだ。