「そうなんですが……」
「現地に行かないと解決しないのか?」
「はい」
「飛行機は?」
「東雲のプライベートジェットをスタンバイしています」
「わかった。車を」
「すでにホテルの下でお待ちしております」

 秘書には、俺の行動は筒抜けだ。美夜を連れ込んでいることまでは知られていないだろうが、ここに滞在していることは知られている。

 東雲財閥は、不動産取引をメインに、リゾートホテルの建設から経営まで手広く事業を担っている。取引に不備があれば、建設もオープンも遅れてしまい、莫大な損失が出てしまうのだ。本当は、美夜と過ごしたかったのだが、ここで渋っているわけにはいかない。

 美夜を起こすのは可哀想だと、メッセージを残して部屋を出た。

 それが間違いだったと気づくのは、ラスベガスから帰国してからのことだった。