それからは、親父の跡を継ぐべく、ひたすら仕事に没頭した。周りから、御曹司だからと言われないように、実力で副社長まで上り詰めた。

 ところが、今度は結婚の話題が飛び交いだす。外国ではパートナー同伴のパーティーも多いのだ。

「壱夜、そろそろ結婚したらどうだ?」
「断る」
「せめて見合いくらいしてくれ」
「結婚する気がないのに相手に失礼だろう?」
「会う前から決めるな」

 そう言われて、無理矢理にホテルの日本料理店に呼ばれた。

 目の前には、どこぞのご令嬢が着物を着て座っているが、全く興味がわかない。にこにこと笑っているが、下心が見え隠れする。親父の顔を立てるために来たが、二度と見合いなんかするものかと心の中で毒を吐く。

 苦痛な時間をなんとかやり過ごすために、レストランから見える庭に目を向けた。

 そこで、俺は一人の女性に目を奪われたのだ――。