惰眠をむさぼるくらいなら





ふふ~ん、と鼻歌が勝手に漏れる。

これ、なんの歌だっけ?

忘れたけど、なんとなく恋の歌っぽい。



「なに、柊。ご機嫌じゃん」

「まあね」



上機嫌にもなるさ。

今度の日曜日が楽しみで仕方ない。



「そういや、例の彼女とはどうなった?」

「例の彼女?」

「ほら、あんたが中学のときから好きだって言ってた子。菜花ちゃん、だっけ?」

「手強いよ。でも、すげー楽しい」


「なるほど、ご機嫌なのはその菜花ちゃん関係ね。でもさぁ、好きな子の気を引きたいからって、ふつー、女友だちにキス頼む? 下手すりゃ嫌われてたよ」


「……知ってる? 嫌われるよりも無関心が1番キツいんだよ」

「4年も地味に片想いしてる男の言葉は重みがあるね」



そうだよ。俺の恋は認識してもらうところから始まったんだ。


菜花と話したくて、関わりたくてクズを演じた。


ナンパしたことも合コンに参加したこともないし、女子とキスしたのだって菜花の気を引くために頼んだ一度だけ。


大して好きでもない女を好きなふりして、どうにか菜花に印象づけたかった。