惰眠をむさぼるくらいなら


……だけどね。自分の幸せより、すぐそこにあるだろう親友の幸せのほうが、ずっとずっと大事なんだ。



「だったら、私がそのストレス発散になってあげるよ。キスでもなんでも、私が相手になってあげる。だから、穂稀くんに悪影響を与えないで」



柊は口の端をゆるめた。



「いいね。じゃあ、菜花に相手してもらおうかな。でもそれだと、俺だけが得するみたいな感じだから、そうだな。毎日ポーカーで勝負して、俺が勝ったらキスするってのはどう?」


「ポーカー?」

「そう。ゲーム性があって、すぐ勝敗がつくからおもしろいじゃん」

「……わかった。いいよ」



こうして私たちは、キスを賭けたゲームをするようになった。


柊はそれからナンパや合コンに参加するのをやめて、私以外の女子とキスするのもやめたらしい。

それが賭け成立の条件だったから。


クズな性格は直らなくても、これでちょっとは女好きが落ち着いたんじゃないかな。





「ねえ。どうせならさ、もう1コ賭けない?」


散らばったトランプを片しながら柊が言う。


「やだ」

「返事が早いよ。別に変なこと考えてないから」