惰眠をむさぼるくらいなら


その頃はもう、穂稀くんを通して柊と話す間柄になっていて。

だけど、そこまで仲いいというわけではなかったので、柊に彼女がいるのは知らなかったし、どうでもよかった。興味もない。


──と思っていたのだけど。



「いるんでしょ。入っておいでよ」



彼女が教室を出ていったあと、なんとなく入りそびれて隠れていた私に柊がそう言った。


こいつ、キスを見られたのに気まずくないのか。

と神経の図太さに感心しながら教室に入る。



「彼女いたんだ」

「彼女じゃないよ?」

「は? でも今、キスして……」

「彼女じゃなくてもキスはするでしょ? ほら、俺、男の子だし。愛想笑いばかりしてると、いろいろたまっちゃってね」

「うっわ。クズッ」

「ストレートだね」



ケラケラ笑う柊。


穂稀くんが一途だから、穂稀くんと仲いい柊もそんな感じなのかなと勝手に勘違いしていた。


そういやこの男、穂稀くんと並ぶくらい人気があるけど、

『穂稀くんは遠くのイケメン、柊は近くのイケメン。遠くのイケメンより近くのイケメン』

と柊派の女子たちから評されてるんだっけ。