「俺、浅桜さんのこと好きなんだけど!」


「…はい?」





なんでこんなことになっているんだっけ…。



確か、あたしは4時間目の体育を終えて体育館から教室に戻っている最中で。


咲花たちと談笑していたところを3年の先輩に呼び止められて…。




そして、目の前で顔を赤くしている先輩男子。




…これって、いわゆる告白だよね?




あたしこの人のこと全然知らないんだけど…?
どうやって好きになったんだ。






「浅桜さん、笑った顔が可愛いなって思って、ずっと前から好きだった」





…顔だけ?



はぁ、とため息をつく。




「…ごめんなさい」




そういうの、間に合ってます。



柊木高嶺っていう男の世話で手一杯なので、これ以上増えても困ります。





「お、俺、絶対不自由させないよ? 楽しくさせるし」


「…いや」


「浅桜さんと付き合えたら、マジで自慢するしっ」




…なんだ。
それが本当の目的ね。



あたしと付き合って自慢なんかできるのかは置いといて。



そういうの、ますますいらない。





「…無理です」





ごめんなさい。





「…そっか。話聞いてくれてありがとね」


「いえ…先輩なら、もっといい人見つかると思います」




当たり障りのない返し。
社交辞令なら得意だ。



それでも本人が喜んでればいいんだよ。





じゃあね、って走っていく先輩。
しばらく呼吸を置いてから、あたしも歩き出した。




…告白なんて、初体験。
咲花たちに話したらどんな反応するかな。