「もー…だから他の男に見せたくないんだよ」
「…た、高嶺」
「もうすぐ文化祭終わるしいいけどさぁ…でもさ…」
なんだかひとりで葛藤してて面白い。
…もう怒ってないみたい。よかった。
こういうことがあると…。
怖いのと同時に、高嶺のあたしへの本気度が伝わってくるから、むず痒い。
変な気持ち。
ちょっとだけ、胸が高鳴る。
「…楓夕、ホントに約束して?」
「うん」
「次からナンパとかされたら、すぐ俺に電話かけること」
「…うん」
彼氏じゃない。
ただのクラスメイト。
一方的な、片思い。
それなのに…こんなにドキドキさせられるのは、なんでなんだろう。
「はぁ…それから、あの後輩と距離感考えて」
「…ごめん」
いや。
それに関しては、あたしは謝る義理ないけどね。
「俺、マジで嫉妬してるから。…慰めてよ? 楓夕」
うん…でも。
あたしも不快な気持ちにさせてしまったのは間違いない。
だからあそこまで怒っていたわけだし。
「なーんて…」
笑って流そうとする高嶺に。
そっと、抱き着いてみる。
手を繋いだときと一緒。
一瞬固まって、「…あ、え…?」と声を漏らす。
…鼓動の音、はやい。
「…楓夕さん、反則だよ」
緊張すると”さん付け”になっちゃう高嶺の癖。
なんだかちょっとかわいくて、ふっと笑って見せると、高嶺は少しだけ拗ねてしまった。