…久しぶりに過去のことを思い出してしまった。
開くだけ開いて手を付けていない数学の課題に目線を落とす。
ノートの隅っこに『浅桜楓夕』と書いて、消して。
…好き。
先輩、俺の気持ちのでかさ知らないでしょ。
そんな簡単な気持ちじゃないんだよ。
もっと、もっと複雑な。
…ガチャ。
ふと、部屋のドアが開いた。
「おまたせ」
そういって入ってきた先輩。
思わず目をそらす。
…これは想定外。
お風呂上りとか、反則でしょ…。
濡れた髪と、胸元の緩いパジャマ。
火照る顔、潤んだ瞳。
…俺を欲情させるにはじゅうぶんすぎる。
「どしたの、ちさくん」
「あ、いえ……ドライヤー、俺がやりますよ」
有無を言わさず、ドライヤーを握る。
先輩は「え? でも…」と渋っているけど、強行突破だ。
「俺は”お兄さん”なので、これぐらいやります」
”お兄さん”を強調して言うと、先輩は「年下のくせに…」と拗ねて口をとがらせた。
うわ…その顔かわい。
もうなんか、ぜんぶダメじゃない?
先輩なにしてても可愛くない?



