バスケが本当にしたかったわけじゃなかった。
部活に入ったのも、やめたのも、楓夕先輩のためだった。
俺が先輩を殴ったというのはきっと部活中で話題になっていただろうし、楓夕先輩の耳にも入っていただろう。
嫌われたと分かっていたけど、俺は先輩が傷つくと思って、先輩を殴った理由は言わなかった。
それなのに…。
先輩は、わざわざ先生に無理を言って俺の家を聞き出してまで、謹慎中の俺の家に押し掛けた。
『なにか理由があったんでしょ?』
『あたしはそんなことじゃちさくんを嫌わないよ』
『…きっと、殴ったほうも痛かったから』
そういって、俺の手を優しく撫でる先輩は、なぜか泣き出しそうだった。
理由も聞かずに俺を責めてばかりいる周りとは違った。
全然、違う。
やっぱり…俺、先輩が好き。
どうしようもなく好きだ。
そのときにはもうすでに抑えられなくなっていた。



