( 知慧SIDE )
◇ ◇ ◇
…なんだ、あの先輩は。
楓夕先輩が出て行ったあとのドアをぼーっと眺める。
『あたしと匂い、おそろいだね』
さっきの言葉が頭の中で反芻してる。
…なんであんな可愛いの、先輩。
嬉しそうに笑われて、思わず言葉を失った。
気の利いた言葉のひとつも言えない。
…先輩の前だと、ダメダメなんだ。
『あたしはちさくんよりお姉さんなんだから、これぐらいやらせて!』
…お姉さん、ねぇ。
先輩のこと大好きだけどね。
そういうとこ、ムカつく。
俺の気持ちに全然気づいてないのか知らないけど、お姉さんとか先輩ぶって、俺のことをただの年下だと思ってる。
おまけに、あの柊木高嶺とかいう男には顔赤くしちゃってさ。
分かってるよ。
先輩よりガキなこと。
…まだ、楓夕先輩には追い付けてないこと。



