「はい、そこ座って」
「…え? はい」
なんできょとんとしてるんだ。
ローテーブルの前に腰を下ろすちさくんの後ろに、膝立ちをするあたし。
それを見て察したのか、ちさくんは「あの」と声を出した。
「貸してさえくれれば自分で乾かしますよ」
「いいの。あたしはちさくんよりお姉さんなんだから、これぐらいやらせて!」
「…はあ」
腑に落ちてないようだけど、関係ない。
年上なのは事実だし、うん。
あたしはドライヤーの電源をつけて、左手でちさくんの髪を触りながら入念に乾かす。
髪の毛短いからすぐ乾くね。
そう考えると、やっぱり男の子っていいなぁ…。
あたし、髪短いの似合わないから、何年もずっとロングだし。
ちさくんの髪ってサラサラで気持ちいい。
意外と世話焼きの素質あるかも、あたし。
まぁ…ちさくんくらいにしかこんなこと出来ないけど。
「よし、おわり!」
「…ありがとうございます」
ドライヤーを片付けるあたしに、うしろから感謝をされる。
いいんだよ、先輩だからね。
…と、鼻を鳴らしてみる。
ふと、ふわっと甘い匂いが鼻をかすめて、思わず顔が綻んだ。
「あたしと匂い、おそろいだね」
「っ…」
うん、悪い気しない。
ちさくんの顔が赤くなっていることには一切気づかず、あたしもお風呂へ行く準備をはじめた。



