「こうして、簡単に部屋にあげちゃうしさ」
小さくつぶやかれた言葉。
二人きりの静寂の中では、よく聞こえる。
だって…ちさくんは、ただの後輩だから…。
「いつまでも可愛い後輩じゃないよ、先輩」
「…へ」
「俺だって男なのに」
…ちさくんが男なのは分かってるよ。
そうじゃなくて、たぶん、ちさくんが言いたいのは…。
「柊木高嶺と、何が違うの? 俺」
そんなこと…あたしに聞かないでよ。
あたしだってわかんないんだってば。
「やっぱ、年下だからダメなのかなぁ」
そんなちさくんの言葉は、気づかないふりをした。
…気づいたら、負けだから。
「先輩はずるいよ」
あたし?
うん、ずるいね。
でもそうでもしないと、ちさくんとも普通に接することができなくなりそうで、怖い。
ちさくんとはね。
いつまでも、仲のいい先輩後輩でいたいんだよ。
「…先輩、お風呂借りていい?」
「うん、お兄ちゃんから部屋着借りてきたから、それ使って」
脱衣所に置いてある、と一言添えると、ちさくんは短く返事をして部屋を出て行った。



