「なに、そんなに見つめて」
「ちがうから」
「まだ何も言ってないのに」
ちゃっかりあたしの隣を歩きながら、笑った。
今の流れ、言うセリフなんてひとつじゃん。
「…惚れた?」
ほら。
ぜんぶ予想通り。
分かりやすすぎ。
そうやって笑う柊木高嶺の肌を思いっきりつねってやりたくなる。
「楓夕は可愛いなぁ、今日も」
独り言だと思って受け流す。
いちいち突っ込んでたらキリがない。
”楓夕”
と呼ぶその声。
新学期以来話すようになって、いつからその呼び方が定着したのかもわからない。
…ていうか、大前提、ぜんぶやめてほしい。
あたしのことを好きだと言いふらすのも。
こうして校門で待ち伏せするのも。
今日は夏休みが開けて二日目。
なぜか、昨日のうちにあたしがこいつに告白されたことが知れ渡っていた。
…原因はたぶん、この男。