「てことで、ほら」
「…ほら、とは」
「ん? 名前呼び」
…いきなり、ハードルが高すぎる。
だけど思えば、絢翔もちさくんも名前呼びなのに、柊木高嶺だけいつまでもフルネームなのは変かもしれない。
「言わないとキスするよ」
「……はっ!?」
ミリ単位で近寄ってくる顔。
む、無理無理!!
なにさりげなくあたしのファーストキス奪おうとしてんだっ、この男!!
「た、たかねっ……」
静まりかえる図書室。
人がせっかく勇気をだして呼んだのに、なぜ沈黙。
耐えられないから喋ってよ、なんでもいいから。
「……あー、やっばいね」
やっと喋ったかと思えば、やばいという抽象的な発言。
なにひとりで勝手に悶えてんの?
変な柊木……じゃなかった、高嶺。
しかも、高嶺が変なのって今に始まったことじゃなかった。