「家まで送ってくよ」
俺の提案に、楓夕は一瞬「いや…」と否定しかけて、口を噤む。
…あれ?
いつもだったら、一人で大丈夫だって断ってくるのに。
「ん…じゃあ、おねがい」
お願い?
…楓夕にお願いされた? 今、俺。
たったそれだけで心臓がうるさくなる。
楓夕の言うこと、なんでも聞きたい。
ぜんぶ聞いて、甘やかして。
俺がいないとダメになってほしい。
「なんで? いつもいらないって言うじゃん…」
俺が聞くと、楓夕は照れ隠しなのかうつむきがちに笑う。
「あたしも、少しでも長く高嶺といたいってこと」
楓夕。
それ反則。
…心臓、ギュンッてなったよ。
最初の頃、楓夕と一緒にはじめて帰ったあの日も。
たしか、コンビニに寄ったよね。
そのとき、俺も同じようなことを言った。
『少しでも楓夕と一緒にいる時間を引き延ばしたくて、コンビニ寄った』
…それを、今は楓夕のほうから言ってくれるなんて。
なんか、感慨深いっていうか。
嬉しいって言うか。
…もうほんと、感無量って感じ?



