「…楓夕?」
思わず名前を呼ぶと、焦ったように顔をあげる彼女。
お風呂上りだろうか。
若干湿ったサラサラの黒髪がふわりと揺れた。
…うそ。
こんなとこで会えんの?
楓夕の家ってこのへんだっけ。
昼間に来るのと夜に来るのじゃ印象違うから気づかなかった。
「た、高嶺っ…」
慌てて名前を呼ぶ姿すら愛おしい。
メイクしてないし、超ラフな格好。
白いTシャツ、グレーのパーカー、ホットパンツ。
…生足。サンダル。
うん、食べたい。
「なんでこんなとこいんの?」
そうだよね。
俺、家全然違うとこにあるしね。
不思議がってる楓夕もかわいいなぁ。
正直、一生見つめてられると思う。
冗談抜きで。
「このへんの友達んちに遊びにいってて」
「へぇ…? 男子?」
…あのさぁ、楓夕さん。
特に深い意味はなく聞いちゃっただけなんだろうけど。
俺が楓夕以外の女と遊ぶと思う?
…まぁ、そうやって無意識に独占欲出してくれる方がありがたいけど。
ていうか。
俺は楓夕にだったらいくら束縛されても喜んで受けるけど。