一旦自分の邪念を取っ払って、目の前でチョコを凝視する高嶺を見守る。
「うまそー」
「…どうぞ」
食べてください、という風に促すと、高嶺はあたしの目を見つめて。
ひとくち、チョコを口に含んだ後。
「んっ…!?」
…あろうことか、あたしにキスを落とした。
いや。
これがただのキスじゃないことくらい、あたしにもわかるんだけど。
つまり、口移し?
口内に甘い味が広がる。
キス自体も甘くて、脳が溶けそう…。
だけど、『やめて』なんてひとことも否定をしないあたしは、やっぱりずるいのかも。
…だって、彼氏にキスをされて嫌なひとなんている?
「…あま」
口を離した高嶺の一言に、やけに色気を感じて、あたし完全ノックアウト。
…でも、あたしよりずるいのはどう考えても高嶺だ。
「楓夕は天才だね」
そうして、また甘ったるい言葉をくれてしまう。
高嶺は、誰よりも素敵な彼氏だと。
…ひどく愛おしい、溺愛中毒者だと。
周りに言って回りたいほどには、あたしも相当浮かれていた。