「なに、徹夜?」
「…うん」
「よくないぞー、せっかく肌綺麗なのに」
別に普通だと思うけど…。
でも、肌が綺麗と言われて嫌な気持ちになるようなひねくれた人間じゃないから、ここは素直に照れてみる。
「あー…、アンタのせいで単語全部忘れた」
「それ、俺のせい? どっちにしろテストまでもたなかっただろ、その記憶」
図星だなぁ。
たまに的確な返しをしてくるところ、うざい。
何も考えてなさそうなのに。
…あたしのことしか、考えてなさそうなのに。
「俺は楓夕のこと考えてたから勉強してない」
「…いや、しなよ」
仮にもテスト期間だよ?
恋に現を抜かすのは勝手だけど、学生の本業は勉学だから。
とか、柄でもない真面目思考を浮かべながら、生徒玄関で上履きに履き替える。
「えー? …ん、じゃあさ」
なにかひらめいたみたいな声。
嫌な予感する。
「一緒にテスト勉強しませんか、楓夕さん」
先に上履きに履き替えて、廊下からあたしの様子を伺う柊木高嶺が、やけに緊張した面持ちで呟いた。
…意味わかんないくらい顔整ってるし。
全女子の彼氏にしたい男No.1に躍り出ちゃうくらいなこのクラスメイト。
たかが、あたしひとりテスト勉強に誘うのにそんな緊張して、バカみたい。
でも、それが面白かったし、いいもの見れた気になったから、その誘いのってあげる。
他の女子が絶対に見ることの出来ない柊木高嶺の表情。
優越感に浸ってしまっていること、別にごまかそうと思わない。
頷いたあたしに、また嬉しそうに笑って。
周りの女子がざわついていることについては、見なかったふりをすることにした。



