数分リビングでおやつを漁って、ついでにオレンジジュースを持って二階に上がる。




大丈夫、大丈夫…。
平常心…。




あたしだけ必死みたいで虚しくなるけど…。
気にしたら負けだ。




ゆっくり部屋のドアを開けて、中を覗く。






「おまたせ」


「ん、おかえり」





…おかえり、だって。
ダメだ、嬉しい。…単純だもん、仕方ない。





ニヤけそうなのを抑えながら、机の上にトレーを置く。





「…わ、すごい。もうそこまで進めたの?」


「うん、あともーちょい」





高嶺ってやっぱり頭いいんだ…。



ただの入試休みだから量が少ないとはいえ、迷うことなくスラスラ解いちゃうんだろうなぁ…。





「楓夕に教えるって使命があるし?」


「……」





…情けないけど言い返す言葉もない。




高嶺に地頭では勝てないからね、致し方ない。





「わかんないとこあったら聞いて」


「…うん」





そういいながらもカリカリとペンを走らせる高嶺の手元を見ていたら、なんだか住む世界が違うなぁ…と悲しくなった。





…思えば、付き合ってからのほうが意識するって、あたしの中で勝手に確立されていた概念で。




高嶺の中では、全然当たり前なんかじゃないんだろうな。





高嶺ってね、たぶん。
…釣った魚に餌をやらない、タイプ。