「だから、ここはこの数字を代入すんだよ」
「…あ、そっか」
……アレ?
これって、恐れていたことが起きてるよね?
間違いなく。
なんであたしたち大人しく、机に向かってお勉強会してるの?
そりゃあ、入試休みだからって気を抜くんじゃないとか言って、数学教師が容赦なく課題を出してきたけど。
課題やるのも兼ねてお泊りしようって…言ったけど…。
…な、なんか思ってたのと違う!!
え? あたしたち付き合ったんだよね?
カップルってもっとこう…くっついたり、甘い空気になったりさ…。
…しない?
少女漫画の読みすぎ?
それが当り前じゃないの…?
頭が混乱中。
ふ、と高嶺の顔を伺ってみるけど…。
「どした、楓夕? 集中できない?」
っ…なんでこいつはこんなにかっこいいの…。
普通に直視できない。
心臓うるさい! …付き合ってから、余計に高嶺のことを意識しちゃってる気がする。
前よりかっこよく見えるし…はぁ。
「いや…なんかおなかすかない? 勉強するなら糖分も取らなきゃだよね」
「あー、確かに。俺もさすがに疲れた」
「うん。じゃあ食べるものないか探してくるね」
一時離脱。
あのままじゃ心臓が壊れちゃうところだった…。
部屋を出たあと、一息ついて顔の火照りと心臓の高鳴りを鎮める。
…初っ端こんな瀕死になってて、この先大丈夫かなぁ…あたし。