去年、あたしの人生にはなにもなかった。




ただひたすらに朝起きて、ご飯をたべて、学校へ行って。
友達と適当に喋って、放課後はまっすぐ家に帰って。




それだけが当たり前なんだと思ってた。




…それだけが、いちばん良い日常だと思い込んでた。




いつからだったか、突然高嶺に話しかけられるようになった。



どこで興味を持たれたのか、今でも分かってない。




…あたしは特別なことをなにもせずに高嶺に好かれてしまったという事実のため、周りの女子にどことなく後ろめたい気持ちもあったけど…。




…ううん。
今ならはっきり言える。




あたしだから、高嶺は好きになってくれた。
高嶺だから、あたしも好きになれた。




きっと、恋し合うべきだったんだよ、あたしたち。




…なんて言ったら、笑われるかな。




柊木高嶺ってね、すごい人。




”女嫌い”で有名なくせに、それでもめげずに話しかける女子がたくさん。




どれだけ冷たくあしらわれても、好きで居続けられるくらい魅力がある。