でもここは、素直に言うしかないよね…。
「…ってない」
『え?』
「行ってない! どこにも」
『…え?』
2回も同じ反応、いらないし。
別に聞き流してくれていいし。
『なんで?』
「咲花、最近彼氏出来て…今日は二人で過ごすんだって」
そう言ったあと、なぜか電話の向こうからため息が聞こえてきた。
なに? ため息つきたいのはこっちなんだけど!?
『うわぁ…マジか』
「マジかってなによ」
『いや、そういうことなら誘えばよかった…って、大後悔中』
今更後悔しても遅いんだから。
あたしは、ずっと…待ってたのに。
「別に…今年に限んなくても」
『…ん?』
「また、来年があるでしょ…」
小さな小さな声で、勇気を出した言葉。
高嶺が黙ってしまったところを見ると、もしかして聞こえてない…? って不安にもなったけど。
『…楓夕、ずるいってば。俺、普通に浮かれるし期待する』
いいよ。
期待しても、いいよ。
…もっとあたしに付きまとって。
『はぁ…じゃあ、来年は絶対誘うから』
「うん」
思わずあたしも口角があがる。
楽しみ…来年のクリスマス。
そのあと、一呼吸おいて高嶺が口を開いた。
『楓夕。今年はありがとね』
「…もう年末みたい」
今年は、か。
そうだね。あたしたち、去年は知り合ってなかったもんね。
『クリスマスなんかほぼ年末だよ』
「それはそうかも」
『それと…来年もよろしく』
「うん、こちらこそ…」
ちょっと照れくさい。
改まって挨拶なんて。
それからは小一時間ほど他愛もない話をしてたけど、その間ずっと、高嶺に会いたいなぁ…って考えてたあたしは、だいぶ不純だ。
この先。
高嶺と一緒にいられますように…。