三時間目がはじまる五分前。
泣きそうになる胸を押さえて、お手洗いに行くため教室を出た。
「楓夕!!」
突然名前を呼ばれて、廊下で立ち止まる。
た、高嶺…?
駆け寄ってくる高嶺の後ろを見ると、荷物を全部持たせられたもう一人の女子。
えぇ…押し付けてきたの…?
不服そうな顔をしながら教室に入っていく。
「いいの? あれ…」
「だって楓夕がいたから」
「…答えになってないし」
でも。
高嶺が他の女子には冷たいのが唯一の救いかもしれない。
だけど、自分の目で見てないところはやっぱり信じられないし、高嶺が嘘ついてるなんて思わないけど、好きになってからなんか変なんだ、あたしが。
…あー、もう。
考えれば考えるほど、抑えてた涙がこぼれそう。
ていうか。
「…えっ!? な、なんで泣い…っ」
珍しく慌てる高嶺。
まだ一筋、頬を伝っただけなのに…大げさだなぁ。
「あれ、高嶺と楓夕? もう授業始まるぞ」
教室の中から覗いた絢翔。
高嶺はあたしの腕を握って、廊下を走りだす。
「絢翔、次休むって言っといて!!」
「は!?」
突然そんなことを言われて驚く声を背中で聞いたあと。
高嶺に握られた手がだんだん熱を持つのを感じていた。



