「最近寒くなってきましたね」
景色を眺めながら、適当な話題を振る。
余韻、楽しませてよ。
「そうだね。ちゃんとあったかくして寝てる?」
「先輩こそ」
「なっ…子ども扱いした?」
こっちのセリフ。
先輩、わかってる?
俺はいつまでも可愛い後輩じゃないんです。
大人しい弟でもないです。
…先輩の前だったら、男でも、オオカミでも、なれるんだよ。
「マフラー巻いてる先輩、かわいくて好き」
「っ……そ、そう? 普通だけど…」
うん。
もっとね、俺でドキドキすればいいなって、思ってた。
遠くの方に見える校門。
そこにもたれかかってスマホを眺めてる人影を見つけて、目を細めた。
…はぁ。
俺、アンタにだけは負けたよ。
「ね、先輩」
「…ん?」
「最後にひとつだけわがまま聞いてよ」
だんだんと校門へ近づくふたり。
ふっと、その待ち人がスマホから目をそらし、こっちを向いた。
「…昼休み、先輩の時間を俺にください」
ぜんぶ、言うから。
あの人にも負けないくらい強い想い、伝えるから。
だから先輩、お願い、頷いて。
「…うん」
変なとこ鈍感で変なとこ察しのいい先輩。
なんの話か、当ててみて。
「楓夕!」
遠くから駆け寄ってくる俺のライバル。
昼休みだけ、先輩のこと貸してね。
それ以外は、アンタにあげる。
譲るよ、これから先も。
──俺の負けだ。



