「ちさくん…珍しいね。今日は」
「はい。たまには早起きもいいなって」
朝が苦手な俺は、基本遅刻ギリギリの電車に乗る。
だから先輩と朝から会うことはほとんどない。
「新鮮で、うれしい」
先輩はずるい。
そんな風に微笑まれたら、少しでも期待したくなる。
俺はね。
先輩に、好きになってほしかったよ。
「俺とでも嬉しいんですね」
「え…?」
ごめん、先輩。
やっぱりあっさりなんて無理だよ。
最後の最後まで抵抗したくなる。
なんかの奇跡が起きて俺のこと好きになんないかな。
「先輩さ、俺のこと、ちょっとでも好きだった?」
「…好き、だったよ」
後輩として? 男として?
…前者だろうな、先輩のことだし。
「どうしたの、ちさくん」
笑ってごまかそうとしてるでしょ、先輩。
仕方ないな。
ごまかされてあげる。



